妊娠超初期に気を付けること

超初期(0週~5週)の赤ちゃん

妊娠週数は最終月経の初日を0日として数えます。月経が毎月規則的にある方が「今月の月経が1週間遅れているな」と思ったときには妊娠5週程度となっています。この時期の赤ちゃんはおなかの中でどのような状態なのでしょうか。

妊娠4~5週の赤ちゃんは非常に小さく胎芽と呼ばれ、胎嚢という袋の中にいます。エコー検査でみえる子宮の中の小さな丸は赤ちゃんではなく胎嚢という赤ちゃんを包む袋です。

妊娠5週頃から脳や脊髄などの中枢神経系や心臓の形成が開始し、7週頃からは肺の形成が始まります。この時期の赤ちゃんは小さいながらもとても大切な臓器を作り始めており、この時期は器官形成期とよばれます。器官形成期の赤ちゃんはさまざまな物質の影響を受けやすく、薬剤、放射線、感染症、アルコールや喫煙などにより器官の形成に影響を及ぼし、先天異常が起こる可能性が高くなることが分かっています。そのため、妊娠初期はとくに生活に気を付ける必要があります。

催奇形因子とは

胎児の発育に影響を与える因子を催奇形因子といいます。 催奇形因子には感染症、薬剤、放射線、アルコール、喫煙、高血糖が含まれるといわれています

食事の注意点

リステリア菌
リステリア菌は、土壌、河川、動物の腸管内などの自然界に広く分布しており、私たちがリステリアに汚染した食品を摂取することによりリステリア感染症を発症します。妊娠中は非妊娠時と比較して約17倍感染しやすいと言われており、さらに、胎盤を通過して赤ちゃんへの感染することがあります。妊娠中に感染すると、流産もしくは子宮内胎児死亡の可能性が上がったり、赤ちゃんが出生した後も、肺炎、敗血症、髄膜炎などの重大な新生児感染症を引き起こす可能性もあります。このような感染症を起こさないために、なるべく感染する可能性のある食品を避けるようにしましょう。

・生もの、加工済みの食品は加熱する。
・生野菜はよく洗う。
・無殺菌の牛乳は避ける。
・チーズはソフトタイプは避け、ハードタイプのものを摂取する。
※カマンベールやブルーチーズなどのソフトチーズにはリステリア菌という細菌が存在している恐れがあるため、妊娠中は食べるのを避けたほうが良いです。しかし、パルメザンチーズや殺菌済のプロセスチーズ、クリームチーズは食べても問題はありません。

トキソプラズマ症
トキソプラズマは寄生虫の一つで、目には見えない大きさです。母親が妊娠中に初めてトキソプラズマに感染すると、胎盤を通して胎児にうつり、脳や目に障害のある赤ちゃんが生まれることがあります。妊娠末期ほど胎児への感染率は上がりますが、妊娠初期の感染ほど重症化しやすいとされています。
人への感染源になる可能性のあるものは大きく2つです。1つは、十分加熱されていない肉を食べること。生肉はもちろん、生ハムやレアのステーキでも感染することがあります。もう1つは猫のふんです。トキソプラズマはどんな動物の肉にも含まれている可能性がありますが、ふんに含まれているのは猫科の動物だけです。猫のふんが混じった土をいじることで感染する可能性があります。人から人に感染することはありません。感染しても健康な人であれば症状は出ないか、出たとしてもかぜのような症状など軽いです。「加熱が不十分な肉を食べる」ほどのリスクはありませんが、念のため、妊娠中に猫のふんを扱うときは手袋をしたり、猫を外に出さないほうが安全です。

・食用肉はよく火を通して調理すること
・果物や野菜は食べる前によく洗うこと
・食用肉や野菜などに触れたあとは、石鹸でよく手を洗うこと
・ガーデニングや畑仕事などでは手袋を着用すること
・動物の糞尿の処理時は手袋を着用すること

③メチル水銀
魚介類は良質のたんぱく質やカルシウム、生活習慣病の予防や脳の発達などに関係する栄養成分を多く含んでいて、私たちの健康な食生活に重要な食品です。しかし、一部の魚介類には水銀が含まれ、赤ちゃんに影響を与える可能性があると指摘されています。サケ、アジ、イワシ、サンマ、タイ、ブリ、カツオ、ツナ缶などは安心して食べられますが、以下の魚には水銀が多く含まれていると言われているため、1回の摂取は80g以内にし、週1~2回に留めるようにしましょう。

週に2回まで:
キダイ、マカジキ、ユメカサゴ、ミナミマグロ、ヨシキリザメ、イシイルカ、クロムツ
週に1回まで:
キンメダイ、メカジキ、クロマグロ、メバチ(メバチマグロ)、エッチュウバイガイ、ツチクジラ、マッコウクジラ 

④カフェイン
コーヒーやお茶に含まれるカフェインは胎盤を通じて胎児に送られます。胎児の肝臓はまだまだ未成熟なため、カフェインは排泄されることなく胎児に蓄積されてしまいます。カフェインが胎児に及ぼす影響にはさまざまな説がありますが、胎児にとって大きな負担となってしまうことは事実だと言えます。血流を阻害しやすい性質から、胎盤機能の低下にもつながってしまいます。
妊娠中のカフェイン摂取量は1日に300mg程度、コーヒーでいえば1~3杯以内であれば飲んでもよいと言われています。1日にコーヒーや紅茶を何度も飲む習慣がある方は、カフェインレスに変えていくのも良いでしょう。

飲酒

アルコールは胎盤を通して胎児に移行し、妊娠中の習慣的な飲酒は流産や早産、さらに胎児の発育、特に脳に悪影響を与えます。妊娠中の飲酒について安全な量や安全な時期はないといわれており妊娠中は全期間を通じて飲酒を控える必要があります。また、授乳中の飲酒も母乳の分泌に影響を与えるだけでなく、アルコールが母乳を通じて赤ちゃんに移行するため、出産後も授乳中は飲酒を控えるようにしましょう。

喫煙

タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素などは、子宮や胎盤の血管を収縮させ、赤ちゃんの酸素不足を引き起こします。その結果、赤ちゃんが低出生体重児になる可能性が高くなります。また、切迫早産、前期破水、常位胎盤早期剥離などを起こりやすくし、胎児の発育に悪影響を与えます。また、乳幼児突然死症候群(SIDS)と関係することも知られています。妊婦自身の禁煙はもちろんのこと、周囲の人も妊婦のそばで喫煙してはいけません。出産後の喫煙も、母乳への影響や受動喫煙で赤ちゃんの呼吸器の病気を起こしやすくなるのを避けるため今回の妊娠をきっかけに禁煙を目指しましょう。

感染症

リステリア感染症やトキソプラズマ症は食事により感染する可能性がある感染症であり食事に気を付けることで感染を防ぐことができます。しかし、このほかにも赤ちゃんへ影響を及ぼす感染症があり、風疹、水痘、伝染性紅斑(リンゴ病)、サイトメガロウイルス感染症、性感染症(クラミジア、梅毒、淋菌、単純ヘルペス、尖圭コンジローマ)など多くのものが、妊娠中にお母さんに感染すると赤ちゃんにも影響を及ぼすことが分かっています。妊娠中は免疫力が低下することも分かっています。感染症から身を守れるように感染症対策をしっかりと行いましょう。また、性行為の際にコンドームを使用することはクラミジアや梅毒などの性感染症から身を守るためにとても大切です。

薬剤

妊娠前は何気なく使っていた薬も、妊娠すると「妊娠経過や赤ちゃんの発達・発育に悪い影響がでたらどうしよう。」といろいろ心配になることが多いかと思います。実際は、妊娠初期の一時的な内服であれば、多くのくすりは妊娠中にのんでも大丈夫だといわれています。しかし薬の中には、催奇形性(おなかの赤ちゃんに奇形を起こす作用) のリスクがある薬が存在します。(※薬を飲んだ事によって必ずしも奇形を引き起こすわけではありません。)薬を飲んだ後に妊娠が分かって、赤ちゃんへの影響を心配な方は、医師に相談してみましょう。
また、一方で、妊娠・出産・授乳中も、病気やトラブルの治療のために、薬を用いることが必要な時があります。薬の必要性や効果、副作用、妊娠に与える影響などについては、医師または薬剤師から十分な説明を受けましょう。また、指示された使い方や量を守りましょう。
一般的によく使用される抗生物質や鎮痛薬の中にも、赤ちゃんの成長に影響を及ぼすため使用を控えたほうが良い薬もあります(ボルタレン・ロキソニンなど)。産婦人科で処方される薬であれば胎児に悪影響なものは処方されませんので、使用したい薬がある場合は、自己判断で購入・使用せず産婦人科医に相談してみましょう。

放射線

病院でのレントゲン検査などで使用される放射線は奇形や発達遅延に影響を及ぼす可能性があります。妊娠がわかった後に病院での検査が必要となったときは妊娠していることをきちんと伝えましょう。

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